9月6日(火)の文献紹介セミナーで私・奈良が発表を行いました。私は2016年5月にNature誌で報告された
「腸内細菌同士の協力関係」について明らかにした論文を紹介しました。
この論文で私が最も面白いと思った部分は、腸内細菌Bと腸内細菌Aが共存する条件下で、それぞれの腸内細菌が相手から利益を得ることを実験で示したところです。
腸内細菌Bは腸内細菌Aによって細かく分解されたあるエサを利用できます。腸内細菌Bは腸内細菌Aから利益を得ていることになります。ちなみに、腸内細菌Aはこのエサを細かくしても自分の利益にならない(生育にプラスにならない)ことがこの論文で示されています。
さて、腸内細菌Aを遺伝子操作してこのエサを分解できなくすると、腸内細菌Bは腸内細菌Aから利益を得られなくなります。このことが腸内細菌AとBの間の関係にどのような影響を与えるかを調べるために以下のような実験をしています。
腸内細菌A(腸内細菌Bのためにエサを分解出来る株)と、腸内細菌Aの遺伝子操作株(腸内細菌Bのためにエサを分解出来ない株)を混ぜて培養したところに、腸内細菌Bを入れると、腸内細菌Aの遺伝子操作株(腸内細菌Bのためにエサを分解出来ない株)が減少して、腸内細菌A(腸内細菌Bのためにエサを分解出来る株)が増加しました。このことは、腸内細菌Bが自分にエサを与えてくれる腸内細菌Aだけに何か良いことをしていることを伺わせる結果で、腸内細菌Aと腸内細菌Bは相互に利益を与え合う関係を持つことを推測させます。
今回の文献紹介は私にとって5回目の発表でしたが、満足のいく発表ができませんでした。英語で書かれた論文を読み、スライドにまとめている間は研究内容について理解しているつもりでした。しかし研究室メンバーから出た質問に答えながら発表していくと、答えられないところが多く、悔しかったです。論文に書いてあることを鵜呑みにせずに、「なぜ論文の筆者はこの実験を行ったのか」と疑問に思いながら論文を読まなければならないと痛感しました。
私が文献紹介できるチャンスはあと1回しかありません。最後の文献紹介では満足のいく発表ができるよう、「自分の頭で考えながら論文読む」ことを意識しようと思います!