2015年8月4日火曜日

研究室にある実験機器「嫌気チャンバー」の紹介をします。

 夏になり、このブログのネタもだんだんと尽きてきました。そこで、このブログでも何回か話題にした嫌気チャンバーの紹介をします。
 嫌気チャンバーは作業スペースを無酸素状態に保つことのできる機械です。酸素に触れると死んでしまう腸内細菌の研究を行っている私たち研究室にとってこの嫌気チャンバーはとても重要です(写真1)。

写真1 嫌気チャンバーとわたくし


 さて、この嫌気チャンバーはどのように無酸素状態を作り出しているのでしょうか。無酸素状態を作るには嫌気チャンバー横に設置されている窒素ガスと水素-窒素混合ガスが欠かせません(写真2)。


写真2 左から炭酸ガス、窒素ガス2本、窒素ガス



 まず窒素ガスが嫌気チャンバー内に入ることでチャンバー内の酸素濃度を約20%から約5%まで下げます。その後混合ガスが入ることで、水素と酸素が、機械に組み込まれている触媒の助けを借りて化学反応を起こし、水になることで、酸素を完全に除去することができます。一番左にある緑のボンベに入っているガスは炭酸ガスです。炭酸ガスは一部の腸内細菌について、炭酸ガスを含む環境で培養することが推奨されているので、チャンバー内に入れる必要がある場合に使います。
 嫌気チャンバーには作業が容易になるような様々な工夫が施されています。私・奈良の一番のお気に入りの機能はチャンバー内の上方にある棚がスライドすることです。嫌気チャンバー内で操作をする際には写真3のように白いアームカバーを装着する必要があります(写真3)。

写真3  気密を守るために締め付けがかなりきついアームカバーのゴム

 外気の侵入を防ぐためにアームカバーの先端についたゴムで腕を強く締め付けるため(嫌気チャンバーを長時間使用した後、締め付けられた痕が30分経っても腕に残るぐらいきつく締め付けられます)、手の動きは制限されます。そのため棚の上の奥に置いてある物を取る時になかなか手が届かず、苦労します。しかし、棚がスライドするので簡単に棚の上の奥にあるものを取ることができます(写真4、5)。

写真4 嫌気チャンバー内の様子。上に見えるのが可動式の棚

写真5 手はあまり深く突っ込めませんが、棚が手前に引き出せるので棚の上のものを取ることが出来ます。


 嫌気チャンバーなしでも小さい嫌気ボックス(アネロパックと呼ばれます)を用いて一部の腸内細菌を培養することは可能です。しかし、菌を植える操作をしている最中に空気に触れるだけで死んでしまう腸内細菌もいます。このため、嫌気チャンバーはとても重要です。
 私がこれまでに培養してきた50種類余りの腸内細菌のうち、2種類がよく生えませんでした。嫌気チャンバーの中で菌を生やす操作をしたので、おそらく酸素は原因ではないと思っています。実験をしているとよく失敗しますが、何が失敗の原因かわからないことがほとんどです。嫌気チャンバーはその原因の一つを(多分)減らしてくれるということで、とても重宝しています。

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