2016年2月9日火曜日

忘れられない試薬

 私・奈良は4年生のときに、24種の腸内細菌を培養しました。それらの腸内細菌には購入元の菌株保存・分譲機関が腸内細菌ごとに推奨している培地(推奨培地)があります。24種の腸内細菌を培養するためには15種類の推奨培地(重複しているものもあったため)を作製する必要があり、その培地作製のために約50種類もの試薬を使用してきました。その中でも「イソ吉草酸」という試薬は今でも忘れられないです。忘れられない理由は、私が使用した試薬の中で一番くさかったからです。イソ吉草酸のにおいは私が実験室で使用している体育館シューズの中のにおいと似ています。




写真1:イソ吉草酸と自分の体育館シューズのにおいを比べる私
この時はあまり似ていませんでしたが、似ている時もあると思います。
おそらくその日の体育館シューズ内菌叢の違いによるものだと思います。



 調べてみると、イソ吉草酸は足の裏の汗や古い角質を細菌が分解することで発生し、足の裏のくさいにおいの原因物質となっていることが分かりました。“くさいにおい”と感じるかどうかは個人差があると思いますが、このにおいはたいていの人がくさいと思うのではないでしょうか。

 さらに、イソ吉草酸は微量でも嫌なにおいを強烈に出すという嫌な点があります。イソ吉草酸は写真のように、厳重に包装してある状態で保管されていますが、




写真2:イソ吉草酸の保管方法
イソ吉草酸は瓶のふたで密封され、袋で密封された状態で、
さらにケースによって密封されています。写真1ではケースだけを開けていますが、
体育館シューズとの比較実験が出来る程度にはにおいます。




 三重に密封された写真のような状態でもほのかにくさいにおいがします。また、においを実験室内に充満させないために、私は強力な排気機能が付いたドラフトチャンバー内でイソ吉草酸の瓶を開封しました。


写真3:イソ吉草酸の正しい扱い方
このようにドラフトチャンバー内で、試薬瓶から欲しい量のイソ吉草酸(液体)を
青色のチップに吸い取って、別の容器に移しました。青色のチップは使い捨てです。



 この後、使用済みチップをドラフトの外に出して、実験ごみ用のごみ箱に捨てなければなりません。そのためにこのチップ一瞬だけドラフトチャンバーに出しましたが、液体が残っていないはずのチップから強烈なにおいが漂いました。このにおいが実験室内に充満しないように、使用済みのチップを3重にした密封袋に入れてチップ用のごみ箱に捨てました。




写真4:イソ吉草酸が付いた実験ごみの廃棄方法
ここまで厳重に密封すれば、においは漂わなくなります。



 培地作製のために、私はイソ吉草酸以外にもさまざまなくさいにおいの試薬を使用していたので、実験室で何かくさいにおいが発生した時は、私のせいでなくても一番に私のせいだと疑われてしまいます。

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